序章

動詞・助動詞・形容詞の活用形はどのような過程で形成されるのか。 上代特殊仮名はどのような音素配列で表せるのか。 これら二つは日本語学の重要な問題である。本書はこれら二つの問題を統合して考究する。 §1 上代語には終止形「 … 続きを読む

第1章 動詞連体形の活用語足はAU

§1 音素・語素 【1】音素 〔条件によっては発音されなくなる音がある〕ことに留意しつつ、〔これよりさらに分解すれば、音とは認められなくなる〕段階まで日本語を分解したものを音素と呼ぶ。 【2】語素 日本語を分解していき、 … 続きを読む

第2章 Yは「い甲」を形成する音素の一つ

§1 近畿語で「ヨ」にも「イエ」にもなる「良し」の第一音素節はYYO 【1】「良し」「吉野」の第一音素節は上代語で「ヨ」にも「イエ」にもなる。 [上代1] 大王し 良し〈与斯〉ト聞コさば[仁徳記歌65] 吉野〈余思努〉ノ … 続きを読む

第3章 「行く」が「ゆく」とも「いく」とも読まれるのはどうしてか YUY

§1 双挟潜化 【1】双挟潜化 (1)双挟音素配列。 〔同一の音素二つが、他の(単数・複数の)音素を前後から挟む音素配列〕になっており、かつ、〔それらのすべてが父類音素である〕か〔それらのすべてが母類音素である〕場合、そ … 続きを読む

第4章 「吾君」が「あぎ」に、「籠モり水」が「コモりづ」になる理由 YMY

§1 「田」は「た」なのに「山田」が「やまだ」と読まれるのはどうしてか 「田」は、単独では「た」だが、「山」に続いた場合には「だ」になる。 田〈多〉ノ稲柄に[景行記歌34] 山田〈夜麻陀〉を作り[允恭記歌78] 「田」の … 続きを読む

第5章 「十」が「ト乙を」「そ甲」「ト乙」「ソ乙」に変化する理由

§1 「十」が「ト乙を」「そ甲」「ト乙」「ソ乙」に変化する理由 【1】上代語で「十」は「ト乙を」「そ甲」「ト乙」「ソ乙」に変化する [上代1] 「十」は句頭にある場合には「ト乙を」である。 夜には九夜 日には 十日〈登袁 … 続きを読む

第6章 ナ変動詞・ナ変助動詞の語素構成と動詞終止形の活用語足W

§1 ナ変動詞・ナ変助動詞の活用語胴 【1】ナ変動詞・ナ変助動詞の連体形の用例 ナ変動詞・ナ変完了助動詞の連体形の語尾は、近畿語では「ぬる」である。東方語では、「ぬる」になる場合もあるが、「ぬ」にも「の甲」にもなる。 ( … 続きを読む

第7章 上代語動詞「居」の終止形が「う」になる理由

§1 上代語動詞「居」の終止形・連体形・連用形の用例 【1】上代語動詞「居」の用例 上代語文献に見える動詞「居」の用例は、終止形「う」、連体形「ゐる」、連用形「ゐ」である。 《終止》 急居、此を、つきう〈菟岐于〉ト云ふ。 … 続きを読む

第8章 上代語「見」の終止形が「み」になる理由

§1 上代語「見」の終止形が「み」になる理由 【1】「見」の動詞語素はMY 上代語「見」の終止形は「み甲」である。そして「見」の連体形は「み甲る」であり、連用形は「み甲」である。 《連体》 後モ取り見る〈美流〉 思ひ妻[ … 続きを読む

第9章 上代語上二段活用動詞の終止形の遷移過程

§1 呼応潜顕 【1】近畿語で「オ乙」段音素節が二連続する語の用例 (1)「八十」は「やそ甲」、「三十」は「みそ甲」と読まれるが、「四十」は「ヨ乙ソ乙」と読まれる。 第5章で述べたように、「十」は、「四=ヨ乙」に続く場合 … 続きを読む