【1】なソ用法での動詞は語素形Y用法
(1)なソ用法の用例。
「な+動詞+ソ」の形で禁止を表す用法(ソは略されることもある)をなソ用法と呼ぶ。
なソ用法では、サ変・カ変は未然形の形になり、サ変・カ変以外は連用形の形になる。
《サ変》 いざ子ドモ たはわざな為ソ〈奈世曽〉[万20 ―4487]
《カ変》 (平安語) なこそといふ 事をば君か ことくさを 関の名ぞとも思ひける哉[金葉和歌集 補遺歌698『新日本古典文学大系9』210頁]
《四段》 命は な死せ賜ひソ〈那志勢多麻比曽〉[記上巻歌3a]
《上二》 な恋ヒソ〈奈孤悲曽〉ヨトソ 夢に告ゲつる[万17 ―4011]
《下二》 吾を言な絶イエ〈奈多延〉[万14 ―3501東歌]
(2)なソ用法での動詞の語素構成。
なソ用法での動詞の語素構成は、[動詞の活用語胴から活用形式付加語素を除去したもの]に活用語足Yを付加したものである。
この語素構成の活用形を動詞の語素形Y用法と呼ぶ。
【2】なソ用法での動詞の遷移過程
《サ変》 為ソ=SYOY+Y+ソ=SYOYYソ→S{YOY}Yソ
→S{YOY}yソ=S{YOY}yソ=せソ
《カ変》 来ソ=K¥O¥+Y+ソ→K¥O¥Yソ
母音部¥O¥Yでは、完母音素Oは顕存し、他は潜化する。
→KjOjyソ=KOソ=コ乙ソ
《四段》 賜ひソ=賜P+Y+ソ→たまPYソ=たまひ甲ソ
《上二》 恋ヒソ=恋PW+Y+ソ→こPWYソ→こP{WY}ソ=こヒ乙ソ
《下二》 な絶イエ=な+絶Y+¥Ω¥+Y→なたY¥Ω¥Y
→なたY{¥Ω¥}Y→なたY{¥Ωj}y=なたY{¥Ωj}=なたイエ