§1 シク活用「良ロし・良らし」
【1】シク活用「良ロし」
良ロしき〈予呂辞枳〉島々[応神紀22年 紀歌40]
「良ロし」の語幹はク活用「良し」の語幹「良=YYO」に助詞「ロ・ら=R∀Ω」が続いたもの。
良ロしき=YYO+R∀Ω+S¥+KYΩY→YyOR∀ΩS¥KYΩY
母音部∀ΩはS¥Kの¥に母音素性を発揮させる。
→YOR∀Ω ―S¥ ―KYωY
父音素Rに∀Ωが続く場合、Ωのみが顕存する場合と、∀のみが顕存する場合とがある。「良ロしき」の場合にはΩのみが顕存する。
→YORαΩしKyY=YORΩしKY=ヨ乙ロ乙しき甲
【2】良らし
明から媛女を いざ養さば 良らしな〈余良斯〉な[応神記歌43]
「良らし」の語素構成は「良ロしき」の語幹「YYO+R∀Ω」に、S¥と終止形の活用語足¥が続いたもの。
良らし=YYO+R∀Ω+S¥+¥→YyO ―R∀Ω ―Sj¥
母音部∀Ωでは、∀は顕存し、Ωは潜化する。
→YO ―R∀ω ―S¥=YO ―R∀ ―S¥=ヨらし
【3】シク形容∀Ω群
語幹末尾音素節の母音部が∀Ωである形容詞はシク活用する。これをシク形容∀Ω群と呼ぶ。
§2 シク活用「賞づらし」
いや賞づらしく〈米豆良之久〉 思ほゆるかモ[万18 ―4084]
「賞づらしく」は動詞「賞づ」に、助詞「ロ・ら=R∀Ω」と、S¥とKWUが続いたもの。
賞づらしく=賞づ+R∀Ω+S¥+KWU→メづR∀Ω ―S¥ ―KwU
∀Ωでは∀は顕存し、Ωは潜化する。
→メづR∀ωしく→メづR∀しく=メづらしく