§1 たづかなし
拙なく たづかなき〈多豆何奈伎〉朕が時
[続紀天平勝宝元年宣命13]
ク活用「たづかなし」の「たづ」は「たづたづし」の「たづ」と同一語で、“片足立ち”の意である。「か」は助詞K∀である。「な」は「をぢなし」「つたなし」の「な」と同一語で、“……のような”の意味を添える語素「如=NOA」である。
「たづかなし」は、“片足立ちとか、それに類似したような”が原義で、“頼りない”の意味になる。
「たづかなし」は、その語幹末尾音素節の母音部がOAだから、ク形容OA群に属する。
たづかなき=たづ+K∀+NOA+S¥+KYΩY
→たづかNOAS ―¥KYωY→たづかNOAs ―jKyY
→たづかNoA ―KY=たづかNA ―KY=たづかなき甲
§2 おほつかなし
一字一仮名の用例ではないが「於保束無」を「おほつかなく」と読む説に従って、その語素構成と意味を述べる。
水鳥ノ 鴨ノ羽色ノ 春山ノ おほつかなく〈於保束無〉モ 思ほゆるかモ[万8 ―1451]
「おほつかなく」の「おほ」は「おほほし」「おほロか」の「おほ=ΩMPΩ」と同一語で、“霧や霞の中にいる状況”。「つ」は「遠つ人〈等富都比等〉」[万5 ―857]の「つ」と同じく、助詞である。「か」は助詞K∀。「な」は「如=NOA」である。
「おほつかなく」は、“霧や霞の中にいるとか、それに類似したような”が原義で、“ぼんやりと”“明瞭ではなく”の意味になる。
語幹末尾の母音部がOAだから、「おほつかなし」はク形容OA群に属する。
おほつかなく=おほ+つ+か+NOA+S¥+KWU
→おほつかNOAS ―¥KwU→おほつかNoAs ―jKU
=おほつかNA ―KU=おほつかなく