第90章 語幹末尾に「助詞か+如」があるク活用形容詞

§1 たづかなし 拙なく たづかなき〈多豆何奈伎〉朕が時 [続紀天平勝宝元年宣命13] ク活用「たづかなし」の「たづ」は「たづたづし」の「たづ」と同一語で、“片足立ち”の意である。「か」は助詞K∀である。「な」は「をぢな … 続きを読む

第91章 動詞「欲る」と形容詞「欲し」  ―シク形容¥群

§1 四段動詞「欲る」 POR¥ 四段動詞「欲る」がある。 《連用》 つてに用法。 此くや 恋ヒむモ 君が目を欲り〈報梨〉 [斉明紀7年 紀歌123] 《連体》 玉ならば 吾が欲る〈褒屡〉玉ノ 鮑白玉 [武烈即位前 紀歌 … 続きを読む

第92章 シク活用形容詞「時じ」と形容源詞「鳥じ」

§1 シク活用形容詞「時じ」 【1】形容詞「時じ」の用例 形容詞「時じ」には“特定の時ではなく、いつでも”“一時期だけではなく、ずっと”“しかるべき時節ではない”などの意味がある。 《未然》 ずむ用法。 来ませ吾が夫子  … 続きを読む

第93章 語幹末尾に「無」がある形容詞

§1 心無し・あづき無し 語幹末尾の「な」が「無」である形容詞がある。 (1)心無し。 真遠くノ 野にモ遇はなむ 心無く〈己許呂奈久〉 里ノみ中に 遇へる夫なかモ[万14 ―3463東歌] この歌の「心無く」は“私の望む … 続きを読む

第94章 形容源詞「おなじ・おやじ」とシク活用形容詞連体形「おなじき」

§1 形容源詞「おなじ・おやじ」 【1】形容源詞「おなじ」「おやじ」の用例 [上代1] 君がむた 行かましモノを おなじ〈於奈自〉コト 後れて居れド 良きコトモ無し[万15 ―3773] [上代2] 橘は 己が枝枝 成れ … 続きを読む

第95章 上代語「ましじ」・平安語「まじ」

【1】上代語助動詞「ましじ」の遷移過程 上代語にはク活用する助動詞「ましじ」がある。 《終止》 今城ノ内は 忘らゆましじ〈麻旨珥〉[斉明紀4年 紀歌96] 《連体》 うらぐはノ木 寄るましじき〈予屡麻志士枳〉 川ノ隈隈  … 続きを読む

第96章 否定推量助動詞「じ」

【1】否定推量助動詞「じ」の用例 否定推量の意を表す助動詞「じ」には終止形と連体形の用例がある。終止形は「じ」であり、連体形は「じ」と「じい」である。 《終止》 若ければ 道行き知らじ〈之良士〉[万5 ―905] 《連体 … 続きを読む

第97章 東方語「あやはとモ」は形容素詞の已然用法  ―ク形容AU群

§1 「あやふかる」「あやほかト」「あやはとモ」の第三音素節はPAU 【1】近畿語「あやふかる」と東方語「あやほかト」「あやはとモ」 (1)上代近畿語には形容詞カリ活用連体形「あやふかる」がある。 [近畿] あやふかる〈 … 続きを読む

第98章 ク・シク分岐語幹末母音部説

§1 “ク活用形容詞は状態を表し、シク活用は情意を表す”説には例外が多い 形容詞にはク活用とシク活用がある。何が異なるからク活用とシク活用に分かれるのか。 “形容詞の意味が異なるからク活用・シク活用の区別が生じる”とする … 続きを読む