第71章 上代語形容源詞「ゆらみ」と平安語ク活用「ゆるし」  ―ク形容∀W群

【1】上代語容原詞「ゆらみ」と平安語「ゆるし」・現代語「緩い」 大王ノ 心をゆらみ〈由良美〉 臣ノ子ノ 八重ノ柴垣 入り立たずあり[清寧記歌107] 「ゆらみ」は形容源詞み語法である。その語幹「ゆら」の末尾素節の母音部は … 続きを読む

第72章 「さやケし」の「ケ」と「さやかに」の「か」  ―ク形容¥A¥群

【1】ケし型形容詞・かに型形容動詞 (1)語幹末尾が「ケ乙」であるク活用形容詞をケし型形容詞と呼ぶ。 「あきらケき〈安伎良気伎〉」[万20 ―4466]・「かそケき〈可蘇気伎〉」[万19 ―4192]・「さやケき〈佐夜気 … 続きを読む

第73章 ク活用する助動詞「∧”し」  ―ク形容YO¥群

【1】助動詞「∧”し」の遷移過程 助動詞「∧”乙し」の第一音素節は、近畿語では「∧”乙」だが、東方語では「べ甲」になることがある。 [近畿] 相ひ見ずは 恋ヒしくある∧”し … 続きを読む

第74章 葦原ノしけしき小屋・葦原ノしコ男  ―シク形容¥OY群

【1】シク活用「しけし」と「葦原ノ醜男」 (1)シク活用連体形「しけしき」。 シク活用「しけし」がある。「小屋」を修飾する場合なら、“貧粗な”と訳せる。 葦原ノ しけしき〈志祁志岐〉小屋に[神武記歌19] (2)しコ男・ … 続きを読む

第75章 シク活用「異し」「うらめし」  ―シク形容¥∀Y群

【1】「異し」がシク活用になる理由 「異し」の語幹末尾の音素節は近畿語でも東方語でも「け甲」であり、他の音素節に変化しない。 [近畿] 逢はざれド 異しき〈家之伎〉心を 吾が思はなくに [万15 ―3775] [東方]  … 続きを読む

第76章 ク活用「繁し」「まねし」  ―ク形容¥∀¥群

【1】ク活用「繁し」 ¥∀¥ ク活用形容詞「繁し」の第二音素節は近畿語でも東方語でも常に「ゲ乙」である。 [近畿] 吾が胸痛し 恋ヒノ繁き〈之気吉〉に[万15 ―3767] [東方] 小筑波ノ 繁き〈之気吉〉木ノ間よ 立 … 続きを読む

第77章 楽し・か黒し・かしこし  ―シク形容ΩWΩ群・ク形容ΩOΩ群・ク形容∀U∀群

§1 楽し  ―シク形容ΩWΩ群 【1】「楽し」第二音素が「の甲」「ぬ」に変化する理由 「楽し」第二音素は「の甲」にも「ぬ」にもなる。 [上代1] たのしく〈多努志久〉飲まメ[万5 ―833] [上代2] 共にし摘メば  … 続きを読む

第78章 白し・著し・トほしロし  ―ク形容WAW群・ク形容WOW群

§1 白し  ―ク形容WAW群 【1】「白」第二音素節が「ろ甲」「ら」「る」になる理由 「白」は、語幹だけで後続語を修飾することもあり、形容源化語素S¥と活用語足に上接して形容詞「しろし」にもなる。 語幹「白」だけで後続 … 続きを読む

第79章 形容源詞「いそしみ」・形容詞「いそし」と「いと県主」「いト手」  ―シク形容OWO群

【1】形容源詞み語法「いそしみ」・形容詞「いそし」の「いそし」は“忠し” 上代語では「いそし」は天皇の言葉においてのみ用いられる。「いそし」の意味は単に“精勤な”ではなく、“臣下として主君に忠勤な”の意である。これを「忠 … 続きを読む

第80章 語幹末尾に助詞「あ」が付いているシク活用形容詞「懐かし」「悔やし」  ―シク形容A¥群・シク形容WA¥群

§1 語幹が「四段動詞語素+助詞あ」であるシク活用形容詞「懐かし」  ―シク形容A¥群 【1】四段動詞語素に助詞「あ」が付いて形容詞・形容源詞の語幹になる (1)「懐K」に「あ」が付いた形容詞語幹。 いや懐かしく〈奈都可 … 続きを読む