§1 音素・語素
【1】音素
〔条件によっては発音されなくなる音がある〕ことに留意しつつ、〔これよりさらに分解すれば、音とは認められなくなる〕段階まで日本語を分解したものを音素と呼ぶ。
【2】語素
日本語を分解していき、〔これよりさらに分解すれば意味・用途を持たなくなる〕段階まで分解したものを語素と呼ぶ。
【3】動詞語素
動詞を分解していくと、その動詞固有の意味を表す語素が現れる。この語素を動詞語素と呼ぶ。
【4】助動詞語素
助動詞を分解していくと、その助動詞固有の意味を表す語素が現れる。この語素を助動詞語素と呼ぶ。
§2 音素節・母音部・潜化・顕存・融合
「淡海」は「あは+うみ」で、淡水湖のことだが、縮約して三音節になると、近畿語では「あふみ〈阿布美〉」[仲哀記歌38]になる。その経緯を、音素節・母音部・潜化・顕存という概念を用いて説明する。
【1】音素節
「あふみ」の「ふ」は一つの音節だが、「あふみ」の「ふ」をさらに分解すると何と何になるか。
従来の考え方によるなら、“ハ行を形成する子音と、母音たるuに分けられる”ということになろう。この考え方は、実際の発音を表すという点ではすぐれている。
だが、「あふみ」の「ふ」は、本質的には、「淡(あは)」の「は」に、「海(うみ)」の「う」が続き、両者が熟合し、縮約したものである。縮約の際に、「は」の「あ」は発音されなくなり、「う」が発音されて、「ふ」になったのである。私は、「ふ」の本質的な音素配列が解るような記法で「あふみ」の「ふ」を表記したい。「あふみ」の「ふ」は“本質的には、ハ行を形成する音素の後に、「あ」と「う」が続く”ものだと表示したい。そこで次のような表記法を用いる。
上代語のハ行を形成する音素を、本書ではPと表記する。
「あふみ」を構成する二つの語素「淡(あは)」と「海(うみ)」を、アルファベットの大文字や平仮名などを用いて、「あPA」「Uみ」と表記する。
「淡海」は、「淡=あPA」に「海=Uみ」が続いたものなので、これを「あPA+Uみ」と記す。「あPA」と「Uみ」が熟合した段階を「あPAUみ」と記す。「あふみ」の「ふ」はPAUと表せる。
淡海=あPA+Uみ→あPAUみ
PAUのように記したものを「音節」と呼ぶのは適切ではなかろう。従来は、“音節とは、一つの母音だけからなるもの、および、一つの子音に一つの母音が続いたものをいう”とされているからである。
そこで音素節という概念を提起する。
一つの音韻について、〔その音韻を含む単語の意味〕や、〔その音韻が他の音韻(無音を含む)に遷移する理由〕を考察して、〔その音韻を構成する音素の配列〕を推定した場合、その音韻および〔その音韻の音素配列〕を音素節と呼ぶ。
「淡海」の「ふ」たるPAUは音素節である。
下二段動詞「経」の終止形たる「ふ」と「あふみ」の「ふ」は同じ音節ではあるが、同じ音素節ではない。
【2】母音部
音素節PAUでは、Pの後に、「あ」音を表す母音素Aと「う」音を表す母音素Uがある。このような場合、“「あふみ」の「ふ」の母音はAUである”というのは適切ではなかろう。従来、“母音は、一つの音節に一つだけある”とされているからである。
そこで母音部という概念を提起する。
音素節にある音素群(単数あるいは複数の音素)のうち、カ行やサ行などの行を形成することには参与しないで、「あ」段や「う」段などの段(ア行の「あ」「い」「う」「え」「お」を含む)を形成することのみに参与する音素群を母音部と呼ぶ。
母音部は単数の音素から成ることもあり、複数の音素から成ることもある。
「あふみ」の「ふ」たる音素節PAUの母音部はAUである。
【3】潜化・顕存
(1)潜化。
「淡+海」は「あPAUみ」になった後、近畿語では、母音部AUのうち、Aは発音されず、Uのみが発音される。この場合のAのように、〔本質的には存在する音素が現象としては発音されなくなる〕ことを潜化と呼ぶ。
潜化した音素であることを示すにはアルファベットの小文字(ギリシア文字のα・ωを含む)で記す。
(2)顕存。
本質的に存在する音素が現象として発音されることを顕存と呼ぶ。顕存する音素はアルファベットの大文字(およびギリシア文字Ωや、別に定める記号)で表記する。
(3)潜顕。
潜化と顕存をまとめて潜顕と呼ぶ。
【4】音素式
「淡」と「海」が熟合して「あふみ」になる遷移過程は、母音部や潜化・顕存の概念を用いると、次のように表せる。
淡海=あPA+Uみ→あPAUみ→あPaUみ=あPUみ=あふみ
このような式を音素式と呼ぶ。
音素式では、潜化した音素を小文字で記すが、その後はその小文字を記さないことが多い。
【5】融合・融合音
東方語では、「あは+うみ」が縮約した場合、第二音素節は「ほ」になることがある。遠江国で用いられる東方語では「遠江」を「遠たほみ〈等倍多保美〉」[万20 ―4324防人歌]と読む。「遠たほみ」は「遠+助詞つ+あは+うみ」が縮約した語である。東方語では「淡(あは)」の「は」と「海(うみ)」の「う」が縮約すると「ほ」になるのである。これは、「淡(あは)」の「は」の母音部Aと、「海(うみ)」の「う」たるUが融け合って、「お」を形成したのである。
複数の音素が合一して、元の音素のいずれとも異なる音韻になることを融合と呼ぶ。長音と短音とは異なる音韻とする。
複数の音素が融合したことを表すには、それらの音素群を{ }でくくる。
融合した音素群を融合音と呼ぶ。
東方語で「淡+海」が「あほみ」になる遷移過程は次の音素式で表せる。
淡海=あPA+Uみ→あPAUみ→あP{AU}み=あほみ
§3 父音素・父音部・母類音素・完母音素
【1】父音素
「た」「ち」「つ」「て」などタ行音節の初頭に共通して存在する音素をTと表す。
同様に、カ行・サ行・ナ行・ハ行・マ行・ラ行・ガ行・ザ行・ダ行・バ行に対して、K・S・N・P・M・R・G・Z・D・Bを定める。
これら11の音素を父音素と呼ぶ。
ワ行・ヤ行を形成する音素は父音素に含まれない。
【2】父音部
音素節の前部にあって、後部の母音部と結合して、ア行音素節以外の音素節を形成する(単数・複数の)音素を父音部と呼ぶ。
父音部は複数の音素から成ることもある。
【3】母類音素
父音素以外の音素を母類音素と呼ぶ。
A・Uや、W・Yは母類音素に含まれる。
【4】完母音素
母類音素のうち、A・O・Uの三つを完母音素と呼ぶ。
Oは、「お甲」ではなく、「オ乙・お丙」を表す音素である。
§4 近畿語完母潜顕法則
【1】近畿語完母潜顕法則
父音素Pに二つの完母音素AUが続く場合、近畿語では、前方にある完母音素Aは潜化し、後方にある完母音素Uは顕存する。
このことを一般化して、次の仮説を立てる。
「上代近畿語において、〔完母音素が二つ連続していて、その前後に母類音素がない〕場合、二つの完母音素のうち、前方にある完母音素は潜化し、後方にある完母音素は顕存する。」
この仮説を近畿語完母潜顕法則と呼ぶ。
この法則は、諸々の用例から帰納されたものではない。基本的な仮説として提起するものである。
【2】父音素と父音素の間にある完母音素は潜化しない
完母音素は次の性質を持つと考える。
父音素と父音素の間にある完母音素は潜化しない。
§5 本質音・現象音
近畿語では「淡海」は「あふみ」と読まれる。その「ふ」の現象としての音素配列はPUと表せる。だが、「淡海」は「淡=あPA」に「海=Uみ」が下接・熟合・縮約したものだから、その「ふ」は、本質的にはPAUである。
このような状況を説明するために、本質音と現象音という概念を提起する。
【1】本質音
〔同一の単語あるいは語素あるいは音素節が、地域・時代によってどのように変化するか、また、その単語・語素・音素節が他の単語・語素・音素節と熟合した場合にどのように変化するか〕を考察することによって推定した〔その単語・語素・音素節の音素配列〕を本質音と呼ぶ。
本質音は近畿語・東方語・九州語を通じて同一であり、また、上代語・平安語・現代語を通じて同一である。地域により、時代によって、音韻転化の仕方が異なるので、異なる音韻になることがよくある。
【2】現象音
本質音における(単数・複数の)音素が、本質音のままで、あるいは潜顕・融合を起こすなどして、仮名で表せるようになった場合、その仮名と音韻を現象音と呼ぶ。また、その仮名において、顕存している音素の配列も現象音と呼ぶ。
本書では、本質音・現象音を記す際、解る部分だけ、あるいは注目したい部分だけをアルファベット等の記号で記し、他の部分を平仮名・片仮名・漢字で記すことも多い。
§6 四段活用動詞連体形語尾の母音部はAU
【1】四段活用動詞連体形語尾の母音部はAU
四段活用動詞連体形語尾は、近畿語では「う」段だが、東方語では「お甲・お丙」段になることもあり、「あ」段になることもある。
[近畿] 降る〈布流〉雪ト 人ノ見るまで[万5 ―839]
逢ふ〈安布〉縁モ無し[万5 ―807]
奈良路来通ふ〈可欲布〉 使ひ絶イエメや[万7 ―3973]
[東方1] 降ろ甲〈布路〉雪ノ[万14 ―3423東歌]
行こ甲〈由古〉先に 波なトゑらひ[万20 ―4385防人歌]
立と甲〈多刀〉月ノ[万14 ―3476東歌]
逢ほ〈阿抱〉時モ[万14 ―3478東歌]
[東方2] 通は〈可欲波〉鳥如す[万14 ―3526東歌]
【2】四段動詞連体形末尾音素節が近畿語で「う」段、東方語で「お甲・お丙」段・「あ」段になる理由
〔近畿語で「う」段になり、東方語で「お丙」段になる〕という変化は、「淡海」第二音素節と同様である。「淡海」第二音素節本質音の母音部はAUである。そこで四段活用動詞(「います・ます」「欲る」を除く)の連体形語尾母音部の本質音はAUだと推定する。
[近畿] 近畿語では、近畿語完母潜顕法則により、前方にあるAは潜化し、後方にあるUは顕存する。
降る=降RAU→ふRaU=ふRU=ふる
[東方1] 「東方語は近畿語完母潜顕法則に制約されないので、AUが融合することがある。{AU}は「お甲・お丙」を形成する。R{AU}は「ろ甲」になり、P{AU}は「ほ丙」になる。
降ろ=降RAU→ふR{AU}→ふろ甲
逢ほ=逢PAU→あP{AU}→あほ丙
[東方2] 東方語は近畿語完母潜顕法則に制約されないので、母音部AUで、前方にあるAが顕存し、後方にるUが潜化することがある。
通は=通PAU→かよPAu=かよPA=かよは
【3】{AU}は「お甲・お丙」を形成する
R{AU}が「ろ甲」であり、P{AU}が「ほ丙」だから、{AU}は「お甲・お丙」を形成する現象音の一つである。
§7 動詞の六活用形は活用語胴と活用語足に分解できる
【1】すべての動詞の連体形末尾にはAUがある
四段活用動詞連体形「降る・降ろ」の本質音は「ふRAU」であり、四段活用動詞連体形「逢ふ・逢ほ」の本質音は「あPAU」であり、四段活用動詞連体形「通ふ・通は」の本質音は「かよPAU」である。三者とも末尾にAUがある。このことを一般化して、すべての四段活用動詞連体形本質音の末尾にはAUがある、と考える。
四段動詞だけでなく、すべての動詞に拡張して、次のとおり考える。
すべての動詞連体形本質音の末尾にはAUがある。
【2】活用語足と活用語胴
(1)活用語足。
すべての動詞連体形本質音の末尾にあるAUを動詞連体形の活用語足と呼ぶ。
連体形だけではなく、未然形・連用形・終止形・已然形・命令形にも、その用法に応じて、活用語足があると考える。それらを終止形の活用語足、命令形の活用語足などと呼ぶ。
動詞の活用語足は、六活用形が同じで、用法も同じなら、段行活用(四段・上二段・下二段・カ行変格活用・ラ行変格活用など)が異なっても、同一の音素配列である。
(2)活用語胴。
① 動詞の活用語胴。
動詞の六活用形の本質音から活用語足を除去した部分を動詞の活用語胴と呼ぶ。
連体形「降る=降RAU」の場合なら、連体形の活用語足AUを除去した「降R」が活用語胴である。連体形「咲く」なら、「咲KAU」からAUを除去した「咲K」が活用語胴である。
四段動詞・ラ変動詞では活用語胴は動詞語素と同一である。
② 助動詞の活用語胴。
助動詞の活用形の本質音は、活用語胴と活用語足とに分解できる。
③ 形容詞の活用語胴。
形容詞(カリ活用を除く)の五活用形(未然形・連用形・終止形・連体形・已然形)の本質音は活用語胴と活用語足とに分解できる。ただ、形容詞の場合には、活用語胴・活用語足に分けるよりも、語幹と形容源化語素と活用語足に分ける方が解りやすい。
【3】先行説と私見との相違点
山口佳紀は『古代日本語文法の成立の研究』327~336頁で、北条忠雄『上代東国方言の研究』474頁の見解を踏まえて、四段動詞「咲く」を例にして、連体形の語素構成を説明する。山口は335頁でいう。「連体形の原構成を〈saka+u〉と推定する。」
私の見解は山口の見解と共通するところがある。とはいえ、私見と山口説との間には相違点も多い。
① 私は、連体形「咲く」を、動詞語素「咲K」と、連体形活用語足AUに分ける。
他方、山口は、連体形「咲く」をsakaとuとに分ける。
② 私は、連体形だけでなく、未然形・連用形・終止形・已然形・命令形も、用法に応じた活用語足が、活用語胴に続いたものだと考える。
「咲かず」の「咲か」なら、活用語胴「咲K」に、動詞未然形の活用語足が続いたものだと考える。
他方、山口は、同書329頁で、「〈未然形〉は、sakaのごとく、~aの形をとる」と述べる。“未然形はsakaそのもの”だとするのである。そうすると、“連体形(saka+u)は「未然形+u」だ”ということになる。この見解は私見とは大きく異なる。私は“連体形は未然形から派生する”とは考えない。
③ 私は、連体形の活用語足AUは、動詞連体形のみに用いられる語素であって、動詞連体形を形成する以外には何の用途もないと考える。
他方、山口は、同書334頁で、「saka+u」のuを「連体助詞」と認識し、「連体助詞uの存在を論証することは容易ではない。」という。
私は、助詞「う」は存在するが、それは動詞連体形活用語足AUとは別の語素だと考える。
④ 私は、東方語ではAUは融合して「お甲・お丙」になることがあると考える。
他方、山口は“auは「お甲」になる”とは述べない。
§8 四段動詞の直結形
【1】四段動詞語素末尾父音素
四段動詞(「います・ます」「欲る」を除く)の語素の末尾には父音素がある。この父音素を四段動詞語素末尾父音素と呼ぶ。
【2】四段動詞の直結形
(1)四段動詞の動詞語素に他の動詞が続く用例。
① 四段動詞の語素に、「あ」で始まる動詞が続く用例。
召さゲ〈咩佐宜〉たまはね[万5 ―882]
尾張に直に向合へる〈牟迦弊流〉[景行記歌29]
これらの用例の四段動詞「召」「向」は連用形ではなく、動詞語素だと考える。
「召さゲ」は、四段動詞「召す」の語素「召S」に、「上ゲ=Aゲ」が下接・縮約したもの。四段動詞語素末尾父音素Sが父音部になり、「Aゲ」のAが母音部になって、「SA=さ」を形成する。
召さげ=召S+上ゲ=めS+Aゲ→めSAゲ=めさゲ
「向合へる」は「向く」の動詞語素「向K」に「合へる=Aへる」が下接・縮約したもの。四段動詞語素末尾父音素Kが父音部になり、「Aへる」のAが母音部になって、「KA=か」を形成する。
向合へる=向K+合へる→むK+Aへる→むKAへる=むかへる
② 四段動詞の語素末尾父音素がMであって、その後にTで始まる動詞が続く用例。
並付き〈那豆岐〉ノ 田ノ稲柄に[景行記歌34]
「並付きノ田」は“(古墳の周囲に)並び付く田”のことである。「なづき」は、四段動詞「並む」の動詞語素「なM」に「付き=TUき」が下接・縮約したもの。
並付き=並M+TUき→なMTUき
MTUは音素節を形成する。その父音部はMTである。M・Tは融合してDになり、ダ行を形成する。
→な{MT}Uき=なDUき=なづき
③ 四段動詞の語素末尾父音素がMであって、その後にKで始まる動詞が続く用例。
ええ しやごしや 此は い祷請ふ〈伊能碁布〉ソ[神武記歌9]
「い祷請ふ」の「い」は動詞に冠される接頭語。「祷請ふ」は、「祷む」の動詞語素「祷M」に、「請ふ=KOふ」が下接・縮約したもの。「祷む」は“祈る”の意。「い祷請ふ」の類義語に「請ひ祷む〈許比能武〉」[万5 ―906]がある。
い祷請ふ=い祷M+KOふ→いノMKOふ
MKは融合する。{MK}はGになる。
→いノ{MK}Oふ=いノGOふ=いノゴ乙ふ
④ 四段動詞語素末尾父音素がSであって、その後にSで始まる動詞が続く用例。
指進みノ〈指進乃〉 栗栖ノ小野ノ
[万6 ―970。歌意については『ちはやぶる・さねかづら』第1章参照]
「指進乃」は短歌の第一句なので五音節で読まねばならない。その五音節は「さすすみノ」だと考える。「指進」が「さすすみ」になるのは、動詞語素「指S」に、「進み=SUすみ」が下接し、縮約したからだと考える。
指進み=指S+進み=さS+SUすみ→さSSUすみ
SSUは音素節を形成する。父音部SSでは同一の父音素が二連続するが、一方は顕存し、他方は潜化する。
→さSsUすみ=さSUすみ=さすすみ
難波津に 御船降ロ据ゑ〈於呂須恵〉[万20 ―4363防人歌]
「おロすゑ」は動詞語素「おロS」に「すゑ=SUゑ」が下接・縮約したもの。
降ロ据ゑ=おロS+SUゑ→おロSSUゑ→おロSsUゑ=おロSUゑ
=おロすゑ
(2)四段動詞の動詞語素に体言が続く用例。
四段動詞は、通例は連体形が後続の体言を修飾するが、動詞語素が体言を修飾することもある。「笑酒〈恵具志〉」[応神記歌49]がその用例である。
「笑酒」は、四段動詞の動詞語素「笑M」に、「酒=KUし」が下接・縮約したもの。
笑酒=笑M+KUし→ゑMKUし→ゑ{MK}Uし
→ゑGUし=ゑぐし
動詞語素の直後に、用言(助動詞・補助助詞を除く)・体言が下接・縮約する活用形を動詞の直結形と呼ぶ。